新海誠監督の最新映画「すずめの戸締まり」は震災(災厄)から日本を守るために奔走するお話です。
「君の名は」は彗星の直撃によって被災、
「天気の子」は天気の災害など、
とにかく自然災害を取り扱った作品が多いです。
新海誠監督がなぜ災害・震災をテーマに映画を作るのか、
被災地との関係性などを調査しました。
そこには映画監督ならではのメッセージがあったようです。
新海誠プロフィール(出身地)

新海誠(しんかいまこと)
本名:新津 誠(にいつ まこと)
生年月日:1973年2月9日(49歳)
出身地:長野県南佐久郡小海町
学歴:中央大学文学部卒業
職業:映画監督
【主な作品】
2002年「ほしのこえ」でデビュー
2011年「星を追う子ども」
2013年「言の葉の庭」
2016年「君の名は」社会現象に
2019年「天気の子」
2022年「すずめの戸締まり」
長野県出身ということで、いわゆる東日本大震災の被災地(東北地方)ではありません。
東日本発生当時、新海誠さんは東京在住で、東京で地震を経験しています。
すずめの戸締まりは2023年の物語

今回の映画は、過疎化や災害により増え続ける日本の廃墟を舞台にした物語です。
宮崎県の過疎の町からスタートし、四国、神戸を経て東京、東北へと旅を続ける中で
各地で災害(地震)を食い止めていく物語になっています。
神戸や東京、東北地方というとそれぞれ大地震が過去に起きた場所です。
ヒロインすずめは4歳の時(2011年)に東日本大震災で母親を亡くしています。
つまり、東日本大震災後のまさに現代の時間軸と同じストーリーになっているのですね。
それから12年後の高校生のすずめのお話です。
現代人にとってぴったりの物語で、入り込みやすい設定になっています。
コロナが与えた影響
この物語を考え始めたのは、2020年1月からだそう。
そして2020年4月には新型コロナウイルスが流行し、一気にパンデミックに。
昨日まであった日常が当たり前ではなくなり、
世界がかわっていくことに新海さんは衝撃を受けたようです。
そのためこの映画では、日常の尊さ、行って帰るという普通の話を作りたかったそう。
日常から出発し、一番遠いところ(死)までいき、また日常に戻ってくる、
日常の確かさを確認する物語を描いています。
コロナ前まであった日常の光景はもう見られなくなってしまいましたよね。
失われた日常の尊さを再確認させられるようなきっかけになったのもコロナだったのかも知れません。
東日本大震災を描いたと明言
「すずめの戸締まり」は、はっきりと東日本大震災を描いた映画だと新海さんは明言しています。
地名など、正式な固有名詞こそ出てきませんが深海さんは、
あの震災が根底にあると断言していますね。
映画内では、緊急地震速報ほ警報音が何度も流れてきますから
苦手な方に対する注意喚起の貼り紙も劇場前に掲載されていました。
正直、何も知らずに観に行ったのでまさかそんな映画だったとは意外でした。
震災を経験された方で、あの音が苦手な方もいるでしょうからそういったかたは避けた方がいいかもしれません。
なぜ災害・震災をテーマに?
東京で被災
それでは、なぜ新海誠監督は「震災・災害」をテーマに映画を作るのでしょうか。
新海さんは、東日本大震災を東日本では経験していませんが、東京で経験しています。
震災当日は、「星を追う子ども」の映画の作業をしていた新海さん。
東京都千代田区麹町のスタジオで制作作業中で、この時は多くのスタッフが泊まり込みで作業をしていたそうです。
東京都千代田区は震度5強。
多くのスタッフがその夜は帰宅できず、近所の小学校に泊まることになったそうです。
新海さんは、自宅に1歳になる前の娘さんがいたので歩いて帰宅したそうですが、
東京で震災を経験した新海さんにとっても忘れられない経験だったようです。
失われる日常がテーマに
日本や自分が住んでいる場所がどうしようもなく失われていく感覚や何かが終わってしまう感覚に深海さんの気持ちが常に侵され続けるようになったのは、この3.11の震災がきっかけだったそう。
その気持ちは2011年以降、映画を作るときには常に頭の中にあったとのこと。
だから深海さんは、災害の映画を描くのですね。
新海さんはいわゆる団塊ジュニアで日本の人口がかなり多かった世代です。
自身の加齢や日本国の老朽化を感じていたとき、大震災が起き、
自分自身や日本の青年期の終わりを告げるようなタイミングで起きたと感じたそう。
無情な自然の怖さ
3.11の震災から10日後、東京で桜が咲いたそうです。

新海さんはこの桜を見たとき、
何があっても日々はこうやって続いていくんだと慰めと当時に
自然は冷徹で人間には無関心だという底知れない怖さも感じたんだそうです。
天気の子のラストシーンではまさにこの桜を描いているそうです。
すずめの戸締まりの企画書を書き始めた頃はコロナ禍の始まり。
その年の3月にも人のいない街に無情に咲く桜を見て震災の時と同じような感覚を受けたそうです。
企画書の段階から、これは東日本大震災を描いた映画だと明確に決めていたと話しています。
なぜ今震災を描くのか
震災からもうすぐ12年を迎える今、なぜ東日本大震災をテーマにし映画を作ったのでしょうか。
それは、災害に対する警鐘とかそういったシンプルなものではないようです。
今回の映画の中で廃墟となった場所にあった人々の日常の声に耳を傾けるシーンがあります。
「おはよう」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
という日常の声に思いを馳せる。
これらは、震災やパンデミックなどで失われた平穏な日常とも重なります。
新海さんは、これまでの作品でも数々の災害を扱っています。

「君の名は」は、災害を食い止める物語、「天気の子」は災害を受け入れる物語。

そして、「すずめの戸締まり」では、災いが日常に貼りついた終末後の世界。
その中で未来を模索していくというお話です。
「君の名は」を最初のステップとして、「天気の子」で次の段階に。
それを踏まえた上での「すずめの戸締まり」というわけです。

今震災を描く理由は、映画監督として、アニメーションというエンタメを提供する者として、
届けられることがある、観た人の何かを変えられる力を正しく使いたいという
強い使命感があるからです。
震災の記憶がほぼない世代も増えてきて、
観客の3分の1から半分くらいはこの映画を見ても震災を連想しないのではと考えているようです。
だからこそ今のうちにこの映画を作らなければならないという想いがあったそうです。
新海さん自身も49歳ということで加齢により、
少なくとも数年前よりは終わりに近づいていると感じているそうで、
この感覚や体力や欲望があるうちに自分の全てを絞り切るような作品を作らなければとの思いで
映画制作にあたっているとのことです。
だからこそこれだけ人の心を揺さぶる作品が生まれるのですね。
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